飲食店営業許可の取得
飲食店を開業するには、保健所から飲食店営業許可を取得することが法律で義務付けられています。営業開始前に必要な手続きと設備基準を確認しましょう。
飲食店営業許可とは
食品衛生法に基づく営業許可の基本について理解しましょう。
許可が必要な業種
飲食店営業許可が必要な事業
店舗型飲食店
- レストラン・食堂
- カフェ・喫茶店
- 居酒屋・バー
- ファストフード店
- 弁当・惣菜店
- ケーキ店・パン店
移動・配達型
- 移動販売車(キッチンカー)
- 屋台・露店
- 宅配・出張料理
- ケータリングサービス
- イベント出店
特殊形態
- 社員食堂
- 学校給食
- 病院・施設の食事提供
- バイキング・ビュッフェ
許可取得の流れ
飲食店営業許可を取得するための手順です。
許可申請のスケジュール
1
事前相談(2-3週間前)
店舗の設計図面を持参し、保健所で設備基準を確認します。
- 平面図・設備配置図の持参
- 営業形態の説明
- 設備基準の確認
2
食品衛生責任者の設置
店舗に1名以上の食品衛生責任者を設置する必要があります。
- 講習会の受講(約6時間)
- 修了証の取得
- 既有資格者は講習免除
3
許可申請(営業開始1-2週間前)
内装工事完了後、保健所に営業許可申請を提出します。
- 申請書類の提出
- 申請手数料の納付
- 施設検査日の決定
4
施設検査
保健所職員が店舗を検査し、設備基準に適合しているか確認します。
- 設備・器具の確認
- 衛生管理体制の確認
- 不適合事項の指摘
5
許可証交付
検査に合格すると営業許可証が交付され、営業開始できます。
- 許可証の受領
- 営業開始
- 許可証の掲示
必要書類と申請手数料
申請時に準備する書類と費用について説明します。
申請に必要な書類
個人申請の場合
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類
- 水質検査成績書(井水・貯水槽使用の場合)
- 登記事項証明書(法人の場合)
法人申請の場合
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類
- 水質検査成績書(井水・貯水槽使用の場合)
- 法人の登記事項証明書
- 代表者の住民票
申請手数料
業種 | 手数料(目安) | 備考 |
---|---|---|
飲食店営業 | 16,000円~18,000円 | 自治体により異なる |
喫茶店営業 | 9,000円~11,000円 | 自治体により異なる |
菓子製造業 | 14,000円~16,000円 | 自治体により異なる |
移動販売 | 16,000円~18,000円 | 営業地域ごとに申請 |
設備基準の詳細
営業許可を取得するために満たすべき設備基準です。
厨房・調理場の基準
構造・材質基準
- 床:耐水性で清掃しやすい材質(タイル、コンクリート等)
- 内壁:床面から1m以上耐水性材質で仕上げ
- 天井:清掃しやすく、結露しにくい構造
- 窓:網戸等の防虫設備を設置
- 排水:適切な勾配と防臭設備
必要な設備・器具
- 冷蔵・冷凍設備:食材保存用、温度計付き
- 加熱調理設備:ガス台、電気コンロ等
- 給湯設備:60℃以上の湯を供給可能
- 換気設備:十分な換気能力を有する
- 照明設備:50ルクス以上の明るさ
洗浄・消毒設備
手洗い設備の基準
従業員用手洗い設備
- 調理場内に専用の手洗い設備
- 温水が出ること
- 手指の洗浄・消毒液を設置
- 使い捨てペーパータオル等を設置
器具洗浄設備
- 2槽以上のシンク(洗浄用・すすぎ用)
- まな板・包丁の洗浄・消毒設備
- 食器・調理器具の洗浄設備
- 洗剤・消毒剤の保管場所
トイレ・更衣室の基準
衛生設備の要件
- トイレ:調理場に直接つながらない場所に設置
- 手洗い設備:トイレ内または入口付近に設置
- 更衣室:調理場と区画された場所に設置(小規模店舗は兼用可)
- 清潔保持:常に清潔に保持できる構造
食品衛生責任者について
必須となる食品衛生責任者の制度について詳しく説明します。
食品衛生責任者の要件
資格取得方法
講習会受講
- 都道府県主催の講習会(約6時間)
- 衛生法規、公衆衛生学、食品衛生学
- 受講料:10,000円程度
- 修了証の交付
有資格者(講習免除)
- 栄養士・管理栄養士
- 調理師
- 製菓衛生師
- 食鳥処理衛生管理者
- 船舶料理士
- 食品衛生管理者
食品衛生責任者の役割
日常の衛生管理
- 従業員の健康管理
- 食材の適切な保存・管理
- 調理器具の洗浄・消毒
- 店舗の清掃・衛生管理
記録・報告業務
- 衛生管理記録の作成・保管
- 食中毒等の事故発生時の報告
- 保健所の指導・検査への対応
- 従業員への衛生指導
営業許可後の義務
営業許可取得後に守るべき義務について説明します。
継続的な義務
許可証の掲示
営業許可証を店舗の見やすい場所に掲示する
定期的な更新
営業許可は5-8年ごとに更新が必要(自治体により異なる)
変更届の提出
営業者、施設、食品衛生責任者の変更時は届出が必要
営業停止・廃止届
営業を停止・廃止する場合は事前に届出が必要
HACCP(ハサップ)対応
2021年6月から義務化
すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられています。
HACCPに基づく衛生管理
大規模事業者・と畜場・食鳥処理場等
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
小規模事業者・一定の業種(飲食店等)
- 手引書に基づく衛生管理
- 衛生管理計画の作成
- 実施記録の作成・保存
検査で指摘されやすいポイント
施設検査で不適合となりやすい項目と対策です。
よくある不適合事項
手洗い設備の不備
- 温水が出ない
- 石鹸・消毒液がない
- ペーパータオルの設置不備
対策:給湯設備の確認、衛生用品の完備
床・壁の材質不適合
- 床が耐水性でない
- 壁の耐水性仕上げが不十分
- 継ぎ目のコーキング不良
対策:適切な材質での施工、防水処理の徹底
換気・照明の不足
- 換気能力が不十分
- 照明の明るさが基準以下
- 窓の防虫設備なし
対策:適切な容量の設備設置、照度測定
営業許可取得成功のポイント
📋 事前相談の活用
設計段階で保健所に相談し、基準適合を確認
👨🍳 食品衛生責任者の早期確保
講習会の日程を確認し、余裕を持って受講
🏗️ 設備基準の理解
材質・構造基準を正確に理解し、確実に満たす
📅 適切なスケジューリング
検査から開業まで余裕のあるスケジュール設定
次のステップ
飲食店営業許可の基本を理解したら、他の許認可についても確認しましょう。