建設業許可の基礎知識
建設業で独立開業する場合、工事の規模によって建設業許可が必要になります。許可の種類、要件、申請手続きについて詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業法に基づく営業許可の概要について理解しましょう。
建設業許可が必要な工事規模
許可が必要となる基準
建築一式工事
- 1,500万円以上の工事
- 延べ面積150㎡以上の木造住宅工事
建築一式工事以外
- 500万円以上の工事
- (税込みの請負代金)
注意:上記金額未満の「軽微な建設工事」のみを行う場合は許可不要ですが、それ以上の規模の工事を請け負う場合は必ず許可が必要です。
建設業許可の種類
建設業許可は大きく2つの区分に分けられます。
一般建設業と特定建設業
項目 | 一般建設業 | 特定建設業 |
---|---|---|
対象工事 | 下請契約の合計が4,000万円未満 (建築一式は6,000万円未満) |
下請契約の合計が4,000万円以上 (建築一式は6,000万円以上) |
財産要件 | 自己資本500万円以上 | 自己資本2,000万円以上 資本金2,000万円以上 |
技術者要件 | 専任技術者 | 監理技術者(より高い資格) |
許可手数料 | 9万円 | 15万円 |
知事許可と大臣許可
営業区域による区分
都道府県知事許可
- 1つの都道府県内のみで営業
- 申請先:都道府県庁
- 許可権者:都道府県知事
- 許可番号:○○県知事許可
国土交通大臣許可
- 2つ以上の都道府県で営業
- 申請先:各地方整備局
- 許可権者:国土交通大臣
- 許可番号:国土交通大臣許可
建設業の29業種
建設業許可は業種ごとに取得する必要があります。
一式工事(2業種)
総合的な企画・調整を行う工事
土木一式工事業
総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事
建築一式工事業
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
専門工事(27業種)
構造・基礎関連
- 大工工事業:木材の加工・組立により工作物を築造する工事
- 左官工事業:工作物に壁土、モルタル、漆喰、プラスター等を塗る工事
- とび・土工工事業:足場組立、掘削、盛土等の工事
- 石工事業:石材の加工・積方により工作物を築造する工事
- 鋼構造物工事業:鋼材の加工・組立により工作物を築造する工事
- 鉄筋工事業:棒鋼等の鋼材を加工・配置する工事
設備関連
- 電気工事業:発電設備、送配電設備等の設置工事
- 管工事業:給排水・給湯設備、空調設備等の設置工事
- 電気通信工事業:電気通信設備の設置工事
- 機械器具設置工事業:機械器具の組立・据付工事
- 消防施設工事業:火災報知設備、消火設備等の設置工事
- 水道施設工事業:上下水道の施設設置工事
仕上げ関連
- 屋根工事業:瓦、スレート、金属薄板等による屋根工事
- タイル・れんが・ブロック工事業:れんが、コンクリートブロック等の組積工事
- 板金工事業:金属薄板等を加工して工作物に取付ける工事
- ガラス工事業:工作物にガラスを加工して取付ける工事
- 塗装工事業:塗料・塗材等を工作物に吹付け・塗付ける工事
- 防水工事業:アスファルト、モルタル、シーリング材等による防水工事
- 内装仕上工事業:木材、石膏ボード、クロス等による内装仕上工事
その他専門工事
- 舗装工事業:道路等の地盤面をアスファルト等で舗装する工事
- しゅんせつ工事業:河川、港湾等の水底を掘削する工事
- 熱絶縁工事業:工作物・設備の熱絶縁工事
- 造園工事業:整地、樹木の植栽、景石の据付等による庭園等の築造工事
- さく井工事業:さく井機械等を用いてさく孔する工事
- 建具工事業:工作物に木製・金属製建具等を取付ける工事
- 清掃施設工事業:し尿処理施設、ごみ処理施設等の設置工事
- 解体工事業:工作物の解体を行う工事
建設業許可の要件
建設業許可を取得するために満たすべき要件について説明します。
経営業務の管理責任者(経管)
経管の要件
個人事業主の場合
事業主本人が以下のいずれかの経験を有すること
法人の場合
常勤の役員のうち1人が以下のいずれかの経験を有すること
建設業に関する経営業務の管理責任者としての経験
- 5年以上:許可を受けようとする建設業
- 6年以上:許可を受けようとする建設業以外
建設業に関する経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験
- 6年以上:執行役員・支店長・営業所長等として従事
専任技術者
専任技術者の要件
国家資格による場合
- 建設業法施行規則別表に定める国家資格
- 1級建築士、1級土木施工管理技士等
- 業種ごとに対応する資格が異なる
学歴+実務経験による場合
- 高校卒業:指定学科+実務経験5年以上
- 大学・高専卒業:指定学科+実務経験3年以上
- 指定学科:土木工学、建築学、機械工学等
実務経験のみの場合
- 10年以上:許可を受けようとする建設業に関する実務経験
- 実務経験証明書による証明が必要
財産的基礎要件
一般建設業の場合
以下のいずれかを満たすこと
- 自己資本:500万円以上
- 資金調達能力:500万円以上の資金を調達する能力
- 直前5年間:許可を受けて継続して営業した実績
特定建設業の場合
以下のすべてを満たすこと
- 欠損比率:20%以下
- 流動比率:75%以上
- 資本金:2,000万円以上
- 自己資本:4,000万円以上
誠実性・欠格要件
誠実性要件
法人の役員や個人事業主等が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
欠格要件(該当すると許可されない)
- 成年被後見人または被保佐人
- 破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わって5年を経過しない者
- 建設業法等に違反し、罰金刑に処せられ、その執行を終わって5年を経過しない者
- 許可を取り消されて5年を経過しない者
- 営業停止処分を受けている者
許可申請の手続き
建設業許可申請の具体的な流れについて説明します。
申請の流れ
要件の確認
経管・専任技術者・財産要件等の要件を満たしているか確認
必要書類の準備
申請書類一式と添付書類の準備(約30種類)
申請書の提出
都道府県庁または地方整備局に申請書類を提出
審査
書類審査・実地調査(必要に応じて)
許可通知
審査期間:知事許可30日、大臣許可120日
主な申請書類
基本書類
- 建設業許可申請書
- 役員等の一覧表
- 営業所一覧表
- 専任技術者一覧表
- 工事経歴書
- 直前3年の工事施工金額
証明書類
- 経営業務管理責任者証明書
- 専任技術者証明書
- 実務経験証明書
- 指導監督的実務経験証明書
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
財産関係書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 注記表
- 附属明細書
申請手数料
許可区分 | 新規許可 | 更新 | 業種追加 |
---|---|---|---|
知事許可(一般) | 90,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
知事許可(特定) | 90,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
大臣許可(一般) | 150,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
大臣許可(特定) | 150,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
許可取得後の義務
建設業許可取得後に守るべき義務について説明します。
継続的義務
標識の掲示
営業所と工事現場に許可票・標識を掲示
帳簿の備付け・保存
営業に関する帳簿の作成・保存(5年間)
変更届の提出
商号、役員、営業所等の変更時は届出が必要
決算変更届(事業年度報告書)
毎年、決算終了後4ヶ月以内に提出
更新申請
5年ごとの更新申請(期限前3ヶ月から受付)
建設業法の遵守事項
契約関係
- 契約書面の作成・交付
- 見積書の作成・交付
- 不当に安い価格での契約の禁止
- 一括下請負の禁止
施工管理
- 主任技術者・監理技術者の配置
- 施工体制台帳の作成
- 施工体系図の作成・掲示
- 工事現場への標識の掲示
建設業法違反の罰則
建設業法に違反した場合、以下のような処分・罰則があります:
- 指示処分:法令遵守や適正な営業を指示
- 営業停止処分:1ヶ月以上1年以内の営業停止
- 許可取消処分:建設業許可の取消し
- 刑事罰:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
建設業許可取得成功のポイント
📋 要件の事前確認
経管・専任技術者の要件を詳細に確認
📊 財産要件の準備
申請前に必要な自己資本額を確保
📝 書類の丁寧な準備
約30種類の書類を漏れなく準備
🏢 専門家の活用
行政書士等の専門家への相談・依頼検討
次のステップ
建設業許可の基本を理解したら、他の許認可についても確認しましょう。