青色申告と白色申告
個人事業主の確定申告には青色申告と白色申告があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを比較して、最適な申告方法を選びましょう。
青色申告と白色申告の基本的な違い
項目 | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
事前申請 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
帳簿の種類 | 複式簿記または簡易簿記 | 簡易な帳簿 |
特別控除 | 最大65万円 | なし |
赤字の繰越 | 3年間可能 | 不可 |
専従者給与 | 届出により全額経費化 | 控除額に制限あり |
手続きの複雑さ | やや複雑 | 簡単 |
青色申告の特典詳細
青色申告特別控除
65万円控除
要件
- 複式簿記による帳簿作成
- 貸借対照表・損益計算書の提出
- e-Tax申告または電子帳簿保存
- 期限内申告
55万円控除
要件
- 複式簿記による帳簿作成
- 貸借対照表・損益計算書の提出
- 期限内申告
10万円控除
要件
- 簡易簿記による帳簿作成
- 損益計算書の提出
純損失の繰越控除
仕組み
事業で赤字が生じた場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、黒字所得と相殺できます。
具体例
年度 | 所得 | 繰越損失との相殺 | 課税所得 |
---|---|---|---|
1年目 | -100万円 | - | 0円 |
2年目 | 80万円 | -80万円 | 0円 |
3年目 | 50万円 | -20万円 | 30万円 |
青色事業専従者給与
概要
配偶者や15歳以上の親族に支払う給与を、届出により全額必要経費として計上できます。
青色申告の場合
- 支払い給与額の全額を経費計上
- 労働の対価として相当な金額
- 事前の届出が必要
白色申告の場合
- 配偶者:最大86万円
- その他親族:最大50万円
- 控除額に上限あり
少額減価償却資産の特例
概要
30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで一括経費計上できます。
青色申告の特例
30万円未満の資産を一括償却
例:25万円のパソコン → 全額その年の経費
通常の減価償却
法定耐用年数で分割償却
例:25万円のパソコン → 4年で分割
帳簿作成の違い
複式簿記(青色申告65万円・55万円控除)
必要な帳簿
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 現金出納帳
- 売掛帳・買掛帳
- 固定資産台帳
作成する書類
- 損益計算書
- 貸借対照表
仕訳例
(借方)売掛金 110,000
(貸方)売上高 100,000 / 仮受消費税 10,000
簡易簿記(青色申告10万円控除)
必要な帳簿
- 現金出納帳
- 売掛帳
- 買掛帳
- 経費帳
- 固定資産台帳
作成する書類
- 損益計算書
記帳例(現金出納帳)
月日 | 摘要 | 収入 | 支出 | 差引残高 |
---|---|---|---|---|
4/1 | 売上代金 | 110,000 | - | 110,000 |
白色申告の帳簿
必要な帳簿
- 収入金額・必要経費を記載した帳簿
- 業務に関して作成・受領した書類の保存
記帳レベル
売上や経費の合計金額が分かる程度の簡易な記録で可
記帳例
4月分売上:
550,000円
4月分経費:
230,000円
節税効果シミュレーション
年間売上1,000万円・経費400万円の場合
青色申告(65万円控除)
売上
10,000,000円
経費
-4,000,000円
青色申告特別控除
-650,000円
基礎控除
-480,000円
社会保険料控除
-800,000円
課税所得
4,070,000円
所得税
286,000円
住民税
407,000円
税額合計
693,000円
白色申告
売上
10,000,000円
経費
-4,000,000円
基礎控除
-480,000円
社会保険料控除
-800,000円
課税所得
4,720,000円
所得税
425,000円
住民税
472,000円
税額合計
897,000円
節税効果
年間 204,000円 の節税
青色申告特別控除65万円により、約20万円の税負担軽減が可能
申告方法の選び方
青色申告がおすすめの人
- 年間所得が300万円以上ある
- 継続的に事業を行う予定
- 家族を事業に従事させている
- 設備投資を行う予定がある
- 会計ソフトを使って帳簿を付けられる
- 節税効果を重視したい
白色申告でも良い人
- 年間所得が少ない(200万円以下程度)
- 事業規模が小さい
- 副業レベルの収入
- 手続きを簡単にしたい
- 帳簿作成に時間をかけたくない
- 会計知識に自信がない
選択フローチャート
事業開始
↓
年間所得300万円以上の見込み?
はい
青色申告を検討
特別控除の恩恵大
帳簿作成の手間を考慮
いいえ
白色申告でも可
手続きが簡単
将来の成長も考慮
青色申告への切り替え手続き
1
承認申請書の提出
青色申告承認申請書を税務署に提出
- 青色申告を開始したい年の3月15日まで
- 開業初年度の場合は開業から2ヶ月以内
2
帳簿の準備
控除額に応じた帳簿作成の準備
- 65万円控除:複式簿記
- 10万円控除:簡易簿記
- 会計ソフトの導入を検討
3
専従者給与の届出
家族を従事させる場合の事前届出
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 給与を支払う年の3月15日まで
注意事項
承認の取り消し
期限内申告を怠ったり、帳簿に不備があると承認が取り消される場合があります。
白色申告への変更
青色申告の取りやめ届出書を提出することで白色申告に戻すことができます。