美容院・エステサロンの許可・資格

美容院・エステサロンの開業には、美容師免許の取得から保健所への届出まで、複数の許可・資格・手続きが必要です。

美容業とは

美容業とは、パーマ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくする営業を言います。美容師法により規制されており、適切な資格と施設基準を満たした上で営業する必要があります。

必要な資格・免許

美容院・エステサロンの開業に必要な資格について説明します。

1. 美容師免許

国家資格(必須)

  • 厚生労働省が認定する国家資格
  • 美容師養成施設で2年以上修学
  • 国家試験(筆記・実技)に合格
  • 都道府県知事への免許申請
  • 美容業務の実施に必須

2. 管理美容師資格

施設管理者として必要

  • 美容師免許取得後3年以上の実務経験
  • 管理美容師講習会の受講(3日間)
  • 常時2人以上の美容師が働く施設で必須
  • 衛生管理責任者としての役割
  • 1施設につき1人以上の配置

3. エステティシャン関連資格

法的義務はないが信頼性向上のため

民間資格
  • 日本エステティック協会認定資格
  • CIDESCO国際資格
  • INFA国際資格
  • AEA認定エステティシャン
取得メリット
  • 技術力の証明
  • 顧客の信頼獲得
  • 差別化要素
  • 継続教育の機会

保健所への届出・許可

美容院・エステサロンの開業には保健所への届出が必要です。

開設届の手続き

1. 事前相談

  • 所轄保健所での相談
  • 施設基準の確認
  • 図面による事前チェック

2. 施設検査

  • 施設完成後の検査申請
  • 保健所職員による現地確認
  • 基準適合の確認

3. 開設届提出

  • 美容所開設届
  • 必要書類の準備
  • 手数料の支払い

4. 確認済証交付

  • 適合確認後の証明書発行
  • 営業開始可能
  • 店舗内への掲示義務

必要書類

美容所開設届の添付書類

  • 美容所開設届出書
  • 施設の構造設備の概要
  • 施設の平面図
  • 美容師免許証の写し
  • 管理美容師資格認定講習修了証書の写し
  • 法人の場合:登記事項証明書
  • 手数料(自治体により異なる、通常15,000円~20,000円)

施設基準

美容所として営業するための施設基準について説明します。

構造・設備の基準

作業室の要件

  • 床面積:1作業椅子あたり13㎡以上
  • 天井高:2.1m以上
  • 照明:100ルクス以上
  • 換気:適切な換気設備
  • 床・壁:不浸透性材料

待合室の要件

  • 作業室との区分
  • 適切な広さの確保
  • 清潔な環境維持
  • 顧客の快適性配慮

衛生設備の基準

洗髪設備

  • 流水装置付きの洗髪設備
  • 給湯設備
  • 適切な排水設備

消毒設備

  • 紫外線灯又は蒸気消毒器
  • 消毒薬を入れる容器
  • 手指消毒設備

その他設備

  • 手洗い設備
  • 汚物箱・毛髪箱
  • タオル等の収納設備

エステサロン特有の要件

エステサロンの場合の追加考慮事項について説明します。

施術内容による分類

美容師法の適用範囲

  • 洗顔・パック
  • フェイシャルマッサージ
  • 眉毛のカット・整形
  • 化粧・メイクアップ
  • 脱毛(一部)

上記は美容師免許が必要

美容師法の適用外

  • ボディマッサージ
  • リンパドレナージュ
  • 痩身エステ
  • リラクゼーション
  • ネイルケア

美容師免許は不要だが技術習得が重要

医療行為との境界

注意すべき施術

  • 針を使った施術(医師のみ)
  • レーザー脱毛(医師のみ)
  • ケミカルピーリング(一定濃度以上は医師のみ)
  • 医薬品の使用・販売
  • 診断・治療行為

その他の許可・届出

業務内容により追加で必要となる許可・届出について説明します。

化粧品販売

化粧品販売業許可

  • 医薬部外品・化粧品の小売販売
  • 都道府県への許可申請
  • 適切な保管・陳列設備
  • 薬事法の遵守

特定商取引法への対応

エステティックサロンの場合

  • 契約金額1か月超1万円を超える場合
  • クーリングオフ制度(8日間)
  • 書面交付義務
  • 中途解約権
  • 概要書面・契約書面の作成

開業の流れ

美容院・エステサロン開業の標準的な流れを説明します。

準備期間(6-12ヶ月前)

  • 事業計画策定
  • 資金調達
  • 立地選定
  • コンセプト決定

設計・施工(3-6ヶ月前)

  • 設計図面作成
  • 保健所事前相談
  • 内装工事
  • 設備導入

許可取得(1-2ヶ月前)

  • 施設検査申請
  • 保健所検査
  • 開設届提出
  • 確認済証取得

開業準備

  • スタッフ採用・研修
  • マーケティング
  • プレオープン
  • グランドオープン

運営上の注意点

開業後の適切な運営のための注意事項を説明します。

衛生管理

  • 器具の適切な消毒
  • タオル類の清潔な管理
  • 施設の清掃・消毒
  • 衛生管理記録の作成
  • 定期的な保健所検査への対応

法令遵守

  • 美容師法の遵守
  • 労働基準法の遵守
  • 個人情報保護法の遵守
  • 景品表示法の遵守
  • 特定商取引法の遵守

費用概算

美容院・エステサロン開業に必要な許可取得費用の目安を説明します。

行政手続き費用

  • 美容所開設届:15,000円~20,000円
  • 管理美容師講習:10,000円程度
  • 施設検査手数料:含まれる場合が多い

その他の費用

  • 行政書士報酬:50,000円~100,000円
  • 図面作成費:50,000円~
  • 設備改修費:要件満たすため

注意点

  • 自治体により基準や手続きが異なる場合があります
  • 事前に所轄保健所で詳細を確認してください
  • 法改正により要件が変更される可能性があります
  • 専門家への相談を強く推奨します

次のステップ:医療・介護分野の許可・資格で、医療・介護業界での開業に必要な許可について学びましょう。